資料室 / 訳注書(史料そのものではない)
中国正史の倭関係記事の訳注書
20世紀以降の刊行 / 2026-07-30
★ここに史料そのものは置いていません。これは「この史料をどこまで信じてよいか」の台帳です。原文も現代語訳も載せず、どこで読めるかを案内します。この台帳自体を、記事や論文の典拠にはしません。
どんな史料か#
★これは史料ではありません。史料を日本語で読むための本です。
『漢書』地理志、『後漢書』東夷伝、『三国志』魏書倭人条、『宋書』倭国伝—— この資料室に台帳のある中国の正史は、いずれも漢文です。
多くの読者(そしてこの媒体)は、訳注書を通してこれらを読みます。 だから、訳注書そのものを台帳に入れます。
国立国会図書館のレファレンス事例は、これらの箇所を収める日本語の書物として、 次のようなものを挙げています定説※1。
- 『魏志倭人伝・後漢書倭伝・宋書倭国伝・隋書倭国伝』(石原道博編訳、岩波書店、1985年、新訂版)
- 『倭国伝:中国正史に描かれた日本』(藤堂明保・竹田晃・影山輝国 全訳注、講談社、2010年)
- 『東アジア民族史:正史東夷伝』(井上秀雄ほか訳注、平凡社、1974年)
- 『評釈魏志倭人伝』(水野祐著、雄山閣、2004年 新装版)
本台帳は、これらの訳文を転載しません。訳文と注釈には、それを作った人の権利があります。
原本はあるか#
★訳注書にとっての「原本」は、底本にした校訂本です。
訳注書を引用するとき、実は2つのものを引いています。
- 漢文の本文(どの校訂本・どの版本によるか)
- その訳者の読み(訓読の選択、語の解釈、補った言葉)
★この2つは、読者から見て同じ顔をしています。
資料室が原文も現代語訳も置かない理由は、まさにここにあります。 記事なら「〜と考えられています」と書けますが、 訳文は「これがその文書の意味です」としか言えません。確度を示す場所がないのです。
訳注書は、その「確度を示す場所」を注のほうに持っています。 だから、注を落として訳文だけを引くと、いちばん大事な部分が消えます。
本台帳は、上記の各書がどの校訂本を底本にしているかを確認できていません※2。
後世の手#
1. 訓読が違えば、意味が変わる。
同じ漢文から、異なる訓読が成り立つ箇所があります※3。 「原文にはこう書いてある」と言えるのは、字句の水準までです。 そこから先の「こういう意味である」は、訳者の読みです。
2. 版によって内容が変わる。
上に挙げた書物には、新訂版・新装版があります。 改版で訳文や注が変わることがあります※4。 引用するときは、版と刊行年まで書いてください。
3. 抜粋は、文脈を落とす。
倭に関する記事は、いずれも東夷伝・夷蛮伝という枠組みの一部です。 倭の部分だけを収めた本は読みやすい代わりに、 中国側の記録者が何をしていたのかを見えにくくします。
どこで読めるか#
- 上記の各書は、公共図書館で所蔵されていることが多い書物です
- 国立国会図書館サーチ(https://ndlsearch.ndl.go.jp/)で所蔵館を探せます
- レファレンス協同データベース(https://crd.ndl.go.jp/)に、
これらの書物と、中華書局の校訂本での所在(巻・冊・頁)を記録した事例があります
★漢文の本文そのものは、漢籍の全文データベースで確認できます。 訳注書と、漢文の本文を、両方見るのがいちばん安全です。
典拠にするときの注意#
★この台帳自体は、記事や論文の典拠にできません。 実際に読んだ訳注書を、版と頁まであげてください。
- 訳注書を引くときは、訳者名・書名・版・刊行年・頁を書く。 「魏志倭人伝によれば」だけでは、誰の読みかが分からない
- 訳文だけを引かず、注も見る。 確度は注のほうにある
- 訳文を「原文にこう書いてある」と言い換えない
- 孫引きをしない。 訳注書を引用した別の本から引くと、読みが2重に通っている
この台帳の未確認事項#
| 番号 | 型 | 内容 | 確認できたら何が変わるか |
|---|---|---|---|
| ※1 | A(孫引き) | 各書の書誌は、国立国会図書館レファレンス事例の記述による。現物を手に取っていない | 各書の性格(どこまで注が厚いか)を具体的に案内できるようになる |
| ※2 | C(欠測) | 各書がどの校訂本を底本にしているかを確認できていない | 「その訳文がどの本文に基づくか」を書けるようになる |
| ※3 | C(欠測) | 訓読が分かれる具体的な箇所を、研究の水準で確認できていない | 「どこで読みが割れるか」を例で示せるようになる |
| ※4 | B(齟齬) | 新訂版・新装版で訳文や注がどう変わったかを確認していない | 版を指定して引用する必要性を、具体例で書けるようになる |
| — | D(範囲外) | 各訳者の学説そのもの | 訳文に反映されている可能性があるが、本台帳の範囲を超える |